第26回日本小児泌尿器科学会総会・学術集会

会長挨拶

 第26回日本小児泌尿器科学会総会・学術集会の開催を仰せつかり、身に余る光栄と深く感謝いたしております。本学会が小児泌尿器科学の発展に寄与できるように、メンバー一同心をこめて準備にあたっております。皆様からの温かいご支援を謹んでお願いします。学会を主催するにあたっての思いと学会プログラムの概要をご紹介させていただきます。

I.小児泌尿器科学25年の歴史の中での本学会の位置づけ
 本学会は第26回に当たり、ヒトの年齢で言えば満25歳の誕生日を迎えるところです。第1回の学会を1992年に主催されたのが、本学の大田黒和生教授であり、その後の四半世紀の歴史を刻む今回、私が本学会を主催させていただくということに、運命の糸を感じます。
 過去25回の小児泌尿器科学会の歴史を振り返ると、第13回・第14回を境に大きく2つに分かれることが判ります。
 前半は、新規に開設された学会として各会長が懸命に学術集会の開催を重ねられた13年間だったと思います。魅力あるシンポジウムが企画され、泌尿器科医や小児外科医、小児科医、その他の皆さんそれぞれの立場から小児泌尿器科診療に対する議論が繰り広げられた時期であったように感じます。
 後半は、各会長のご尽力により、学術集会の演題数が毎回増加し、内容も充実したものになっていきました。そして成熟した学会になるため、1年に1回の学術集会の活動だけでなく、認定医などの教育活動やホームページを利用した広報活動など、学会が本来担うよう求められている日常の活動が行われるようになっていきました。学術集会で壇上に上がって発表するシンポジウムなどと違い、これらの活動はボランティア的なものであり、主導してくださる方がなかなかいらっしゃいませんでした。しかし、2005年に学術委員会で「停留精巣診療ガイドライン」が刊行されてから、これが学会本来の活動だということが会員の皆さんの共通認識となり、様々な委員会活動が活発に行われるようになりました。保険委員会では、何代もの保険委員長と委員の地道な努力が実って外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の仲間入りをすることができました。その結果、日本泌尿器科学会の指導もあり2016年には手術の保険点数が大幅にアップしました。内科系学会社会保険連合(内保連)を通しての要望も行われるようになり、学会の特色を生かした保険活動が展開されています。さらに学術委員会では10年来の懸案事項であった、停留精巣以外の疾患に対する診療指針の作成が進められ、「小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)診療手引き2016」と「小児膀胱尿管逆流(VUR)診療手引き2016」が同時発刊されるという偉業が達成されました。
 次の25年に向けて、今私たちは歩み始めました。本総会が新しい未来への橋渡しになればと願っております。

II.本学会のテーマとそれにこめた思い
 本学会のメインテーマを「夢の階(きざはし)、明日への棧(かけはし)」といたしました。その思いは二つあります。
 一つは、医療がいかに進歩しても、医の基本は患者の幸せにあることを再認識したいということです。生まれながらの病に罹った子どもたちが、自由に心躍らせ好奇に戯れることができるようになるという夢への階段、そしてそんな子どもたちの毎日の体験と成長を、親たちが愛豊かに見守る先の明日のために、私たち医療従事者は棧(かけはし)になることができればという思いです。skill とscienceに偏りがちな最近の医療にhumanityを思いおこすきっかけになればと考えました。
 もう一つは、本学会は日本小児泌尿器科学会の発足四半世紀後に開催することから、先達が築かれた輝かしい歴史を紐解きながら、本学会が希望に満ちた「夢の階(きざはし)」になればという思いです。日本社会と同じように現在の医療界は活力を失いかけていますが、若い医師や看護師、その他の医療従事者が自信と誇りを持って先進的な医学や医療に取り組んでほしいと思います。そのために日本の小児泌尿器科学と小児泌尿器科医療の中興の祖とも言うべき先駆者をお迎えいたします。そして先達の輝かしい偉業の奥に隠された苦労と努力の足跡を知った上で未来の社会・医療を展望してもらうため、小児泌尿器科の過去、現在、未来を体験することのできるような展示館を会場に併設し、「明日への棧(かけはし)」となるようにする予定です。
 このような思いをこめたテーマですので、プログラムの企画にあたっては単なる冠名称に終わらぬように、「夢の階(きざはし)、明日への棧(かけはし)」を反映することにこだわりました。

III.学会プログラムの概要と趣旨
 会場は名古屋駅から地下街を通って数分の所にある「ウインクあいち」です。5階と10階のツーフロアで学術集会を開催いたします。5階では主に口頭発表を、10階ではポスター発表と展示をメインに運営します。5階では第1会場でワークショップを中心に小児泌尿器科の学問を学び、学会賞をめざして日頃の研鑽の成果を競っていただきます。第2会場ではシンポジウムを中心として、医療と医学の狭間の魅力的な世界を感じていただく様々なセッションを企画いたしました。演者の皆様の登場の仕方にも注目して下さい。
 学術集会のプログラムの根幹になるものとして3つのシンポジウムを企画しました。シンポジウムのキーワードをそれぞれ「男女共同参画」「未来の医療」「留学」としました。
 日本小児泌尿器科学会ではこれまで男女共同参画をメイン企画として取り上げたことはありませんでした。初めての試みになります。泌尿器科医や小児外科医、小児科医に加え、研修医にもシンポジストになってもらう予定です。それぞれの立場から男女共同参画についての思いを語っていただきます。本シンポジウムにタイアップして、日本女医会元会長の津田喬子先生に、日本の医療界における男女共同参画の歩みを「男女共同参画から男女平等参画の時代へ」と銘打って“特別講演”でお話しいただくことになりました。
 未来の医療についてのシンポジウムでは、宇宙医学や再生医療、医療ネットワーク、ロボット医療の先にあるAI(人工知能)を「私(それぞれの演者)の未来予想図」として、小児泌尿器科医療との係わり合いの中で講演していただきます。未来を担う若手医師へのメッセージをお話いただき、「明日への棧(かけはし)」にしていただければと思います。本シンポジウム終了後に長岡技術科学大学イノベーション専攻の改田哲也教授に「日本からのイノベーション、人間第一からの卒業」という未来の人間社会についての特別講演をしていただくことになりました。
 3つめのシンポジウムは、かつて福沢諭吉が明治新時代の将来を担う若者に向け「学問のすゝめ」を著したことにならって「留学のすゝめ」としました。最近、日本の若者たちがワークライフバランスの名の下に「仕事と生活の調和」を目指す傾向にあると言われています。それ自体悪いことではありませんが、若手医師におけるその端的な影響として、海外に留学をする医師が少なくなっているように思います。本学会ではこれまで、海外留学について正面から向き合ったことがありませんでした。そこで何人かの先生にご自身の留学生活を語っていただき、それが現在の医師や研究者としてのご自分にどのように影響を与えたのかを若い皆さんに伝えていただこうと思います。このシンポジウムの後に皆さんの瞳がグローバルなマインドを持って光り輝くことを期待します。
 以上の特別講演とシンポジウム以外にも教育講演、ワークショップ、4種類のレクチャーなどを計画しています。これらの企画においては最近3回の学術集会の中で心に残ったものを参考に企画させていただきました。宮北英司会長の第23回学術集会のシンポジウム「ミレニアムの子どもたちの今は輝いているか?」は今回、ワークショップ「小児泌尿器科疾患の成育医療」として生まれ変わります。白髪宏司会長の第24回学術集会のシンポジウム「小児泌尿器科学における基礎研究の意義と面白さ」は今回、リサーチカンファレンスの「小児泌尿器科学、基礎研究事始め」の下地とさせていただきました。河内明宏会長の第25回学術集会では他学会とのjoint meetingを進められており、今回も他の学会や団体で作成されたガイドラインを、ご許可いただいた上でキーポイント・レクチャーやアップツーデート・レクチャーの中で紹介していただきます。
 共催セミナーも3社のご協力を得て開催する運びとなりました。講師はその道の手練れの先生が担当して下さいます。「夜尿症・尿失禁」「小児の過活動膀胱」「小児腎腫瘍(腎血管筋脂肪腫」の講演を満喫して下さい。
 本学会のフィナーレは文字通りフェアウェル・フォーラムです。「プロテジェとメンターで創る 小児泌尿器科あすなろ物語、夢の階(きざはし)」というテーマの下で、まだ“翌檜(あすなろ)”である若手医師たちに“檜(ひのき)”になるための階段を上る夢を語ってもらい、それを指導医が見守るという企画です。会員の皆様に参加いただき、温かい拍手で激励していただくことが新企画成功の決め手になるだろうと思います。どうか宜しくお願い申し上げます。
 今回、過去25回の日本小児泌尿器科学会の歴史にはなかったハンズオン・トレーニングを準備しています。腹腔鏡手術の初心者、初級者を対象に剝離、切開、縫合のコツを習得していただきます。人数限定にはなりますが、見学は自由です。是非ハンズオン会場にお越し下さい。

IV.会員の皆さんに満足していただける学会をめざして
 最後に、私の本学会への思いを述べさせていただきます。私ごとですが、卒業して数年の間は日常の医療業務の中で自分のやり方では、論文に報告されているような結果が得られず悩んでいました。その頃に参加したある学会で斬新な企画に心うたれ、自分の医療や医学に対する態度が一変した鮮烈な思い出があります。本学会でも若い先生方が強い刺激を受け、医師としての限りない才学を育むきっかけになれば望外の喜びです。
 逆に指導医もいない小さな病院に勤めていたころ、ある学会で十分に洗練されていない発表をすると、容赦ない厳しい質問や指摘を受け、二度とこんな学会には参加したくないと思いました。そのとき「ちゃんと英文論文にしなさい。世界が正しい評価をしてくれるから。」と助言して下さった先生がいらっしゃいました。それ以降、学会発表後は歯を食しばってでも雑誌に投稿するようになりました。ですから、本学会でもそのような窮地に陥っている若手医師を見つけると、そっと励ましをするようにしています。若い皆さんから「日本小児泌尿器科学会で発表してよかった。モチベーションが高まりました。」と言っていただけるような学術集会にしたいと思います。
 久しぶりの東海地区での学術集会です。お越しいただく会員の皆様に満足していただけるような学会になればと丹精を尽くして準備にあたっております。多くの関係者の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

第26回日本小児泌尿器科学会総会
会長 林 祐太郎
(名古屋市立大学大学院医学研究科 小児泌尿器科学分野 教授)